30秒まとめ
- 父母の話し合いがまとまらないときは、裁判所が「父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情」を考慮して、共同親権か単独親権かを決めます
- 虐待やDVのおそれがあるときなどは、必ず単独親権になります
- 共同親権でも、日常のことや急ぐ事情があるときは一方の親が決められます。ただし転居や進学先の決定は、原則として父母で決める事項です
1共同親権とは?2026年4月から選べるようになりました
2026年4月1日に施行された改正民法により、離婚後も父母の双方が親権者となる「共同親権」を選べるようになりました。離婚の際には、共同親権とするか、どちらか一方の単独親権とするかを定めます。
法律上、共同親権と単独親権のどちらが原則ということはありません。この記事では、「話し合いがまとまらないとき、裁判所はどう判断するのか」と、「共同親権になった後、進学や転居をどう決めるのか」の2点を中心に解説します。
2共同親権か単独親権か|争いになったときの裁判所の判断基準
親権者は、まず父母の話し合い(協議)で決めます。まとまらない場合は家庭裁判所の調停で話し合い、それでも決まらなければ審判や裁判で、裁判所が定めます。
裁判所が考慮すること
裁判所は、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮して、共同親権とするか単独親権とするかを判断します(民法819条7項)。手続の中では、裁判所は父母それぞれから意見を聴かなければならず、子どもの意思を把握するよう努めることとされています。
どちらが認められやすいかは、個別の事情によって判断されるため、一概にはいえないとされています。また、子どもが複数いる場合は、子どもごとに定めます。
必ず単独親権になる場合
次のような場合、裁判所は必ず単独親権と定めます(民法819条7項)。
- 虐待のおそれがある場合:父または母が、子どもの心身に害悪を及ぼすおそれがあるとき
- DVのおそれなどで、共同して親権を行うことが難しい場合:父母の一方が他方から暴力等を受けるおそれや、協議がまとまらない理由などを考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難なとき
- そのほか、共同親権とすることで子どもの利益を害する場合
「そのほか、共同親権とすることで子どもの利益を害する場合」とは
上の「虐待のおそれ」と「DVのおそれなど」は、あくまで代表的な例です。法務省の解説では、この2つのどちらにも当たらない場合でも、父母の双方を親権者とすることで子どもの利益を害すると認められるときは、裁判所は必ず単独親権としなければならないとされています。3つ目の要件は、虐待やDV以外のさまざまな事情を受け止める「受け皿」の役割を持つ規定です。
どのような事情がこれに当たるかについて、法律や法務省の資料に具体的な列挙はなく、父母と子との関係、父母の関係その他一切の事情から個別に判断されます。例えば、次のような事情は、子どもの利益の観点から重く考慮される可能性があります。
- これまで養育の責任を果たしてきたか:別居している親が、長期間にわたって子どもの養育に関わってこなかった、収入があるのに正当な理由なく養育費を支払ってこなかった、など
- 子どものことを一緒に決められる状態か:一方の親と連絡がとれない、子どもの養育に関する協議を正当な理由なく拒否し続けているなど、進学や医療などを適時に決められず、子どもに不利益が生じるおそれがある
- 父母が互いに協力する義務を守ってきたか:子どもの前で他方の親を誹謗中傷する、親子交流の取り決めを正当な理由なく守らない、など
- 子ども自身の意見:子どもが自分の意見を表明できる年齢で、一方の親が親権者となることを強く拒んでいる
法務省は、親権者を変更する場面について、「子の養育に関する責任をこれまで十分に果たしてきたか」や「父母が互いの人格を尊重し協力する義務を守ってきたか」も考慮要素の一つになるとしています。なお、3つの要件のいずれにも当たらない場合でも、裁判所は子どもの利益のために単独親権と定めることができます。
ここでいう虐待やDVは、殴る・蹴るといった身体的な暴力に限られません。また、法務省の解説では、単独親権を求めるために医師の診断書のような客観的な証拠が必ず必要というわけではなく、さまざまな事情が総合的に考慮されるとされています。一方で、虐待やDVを主張しても、それが認められずに共同親権と定められることもあり得ます。
法務省の解説で示されている考え方の例
| 場面 | 考え方 |
|---|---|
| 相手方への誹謗中傷や、人格を否定する言動が繰り返されている | 共同して親権を行うことが「困難」と判断される可能性がある |
| 感情的な対立はあるが、子どものことについて最低限のやり取りはできる | 直ちに「困難」とまではいえず、共同親権と定められることもある |
| 父母の一方が合意していない | 合意がないことだけで単独親権になるわけではなく、個別の事情によっては共同親権と定められることもある |
3共同親権になった後、一方の親だけで決められることは?
共同親権の場合、親権は父母が共同して行うのが原則です。ただし、次の2つの場合は、一方の親が単独で決めることができます(民法824条の2)。
一方の親が単独で決められる場合
- 監護及び教育に関する日常の行為:日々の生活の中で生じる、子どもに重大な影響を与えないこと
- 子の利益のため急迫の事情があるとき:父母の話し合いや裁判所の手続を待っていては間に合わず、子どもの利益を害するおそれがある場合
「日常の行為」に当たるもの・当たらないもの
法務省は、次のような例を示しています。
| 一方の親が決められる(日常の行為) | 父母で決める(日常の行為に当たらない) |
|---|---|
| 食事や服装の決定 | 子どもの転居 |
| 短期間の観光目的での旅行 | 進路に影響する進学先の決定(高校に進学せずに就職するなどの判断を含む) |
| 心身に重大な影響を与えない医療行為の決定・通常のワクチンの接種 | 心身に重大な影響を与える医療行為の決定 |
| 習い事・高校生の放課後のアルバイトの許可 | 財産の管理(預金口座の開設など) |
進学・転校など学校のこと
学校に関することでも、出欠の連絡、給食の手続、修学旅行などの学校行事への参加の同意、三者面談への対応などは、通常は「日常の行為」に当たります。一方で、入学・転学・退学・休学などの手続(願書の提出や授業料の納付を含む)は、日常の行為には当たらず、父母で決める事項とされています。
入学手続の期限が迫っていて、話し合いや裁判所の手続では間に合わない場合などは、「急迫の事情」として一方の親が手続できることがあります。
転居(引っ越し)
子どもの転居は、移動の距離にかかわらず子どもの生活に大きな影響を与え得るため、同じ学区内の転居も含めて、基本的には日常の行為に当たらないとされています。
ただし、DVや虐待からの避難が必要な場合は「急迫の事情」に当たり、一方の親が子どもを連れて転居できます。この場合のDVや虐待も身体的な暴力に限られず、被害を受けている最中やその直後だけでなく、急迫の事情がある状態が続くこともあるとされています。仕事の転勤に伴う転居などは、話し合いの状況などから個別に判断されます。
4同居している親だけで進学・転校・転居を進めたらどうなる?
共同親権なのに、日常の行為や急迫の事情に当たらない事項を、もう一方の親に無断で進めた場合について、法務省は次のように説明しています。
- 親権者の変更などで考慮される可能性:その経緯や態様によっては、親権者の指定・変更の審判や、親権喪失・親権停止の審判などで考慮される可能性があります
- 損害賠償の可能性:もう一方の親の親権を侵害した程度によっては、損害賠償義務などが生じることもあり得るとされています
- 父母の協力義務との関係:改正民法は、父母が互いに人格を尊重し協力しなければならないと定めています。正当な理由なく、もう一方の親に無断で子どもの住まいを変えることなどは、個別の事情によってはこの義務に違反すると評価される場合があります
なお、DVや虐待から避難するために子どもを連れて転居することは、この義務に違反するものではありません。また、無断で転居した側がDVなどを証明できなければ義務違反になる、という仕組みでもありません。
学校などの手続が進まないこともあります
父母の意見が対立していることを学校が知っている場合、一方の親だけの申し出は、有効な親権の行使がないものとして扱われることがあります。進学や転校の時期が決まっている場合は、早めに話し合いや裁判所の手続を進めることが大切です。
5意見が対立したときに使える裁判所の手続
父母の意見がまとまらない場合は、家庭裁判所の手続を利用できます。いずれも調停で話し合い、まとまらなければ審判で裁判所が判断します。
| 手続 | 内容 |
|---|---|
| 親権行使者の指定 | 転居先の決定や進学(在学契約)など、特定の事項について、どちらの親が単独で決めるかを裁判所に定めてもらう手続です。「子の教育全般」のような広い定め方はできず、公正証書などで当事者同士が定めることもできません |
| 監護者の指定 | 子どもの監護をどちらに委ねるかを定める手続です。監護者は、日常の行為に限らず、子どもの監護教育や住まい(居所)の決定を単独で行うことができ、もう一方の親はこれを妨げてはなりません |
| 監護の分掌 | 平日と週末で分ける、教育に関することは一方に委ねるなど、監護の分担を定める手続です |
| 親権者の変更 | 共同親権から単独親権へ、またはその逆など、親権者を変更する手続です |
受験や進学の期限が迫っている場合でも、親権行使者の指定は審判を申し立ててから2〜3か月程度で判断されることもあるとされています。ただし、時間に余裕をもって申し立てることが勧められています。
6よくある質問
共同親権と単独親権では、どちらが認められやすいですか?
法律上どちらが原則ということはなく、子の利益のため、父母と子との関係や父母の関係などあらゆる事情を考慮して判断されるため、一概にはいえないとされています。もっとも、実務上は、子どもと一緒に暮らしている親(監護親)の単独親権となることが多いのが実情です。また、虐待やDVのおそれがあるときなどは、必ず単独親権となります。
共同親権でも、子どもを連れて引っ越すことはできますか?
子どもの転居は、同じ学区内でも基本的に父母で決める事項とされています。ただし、DVや虐待からの避難が必要な場合は、一方の親が子どもを連れて転居できます。話し合いがまとまらないときは、親権行使者の指定や監護者の指定を家庭裁判所に申し立てる方法があります。
修学旅行や習い事にも、もう一方の親の同意が必要ですか?
修学旅行などの学校行事への参加や習い事は、通常は「日常の行為」に当たるため、一方の親が決めることができます。一方で、入学・転学などの手続や、進路に影響する進学先の決定は、父母で決める事項とされています。
DVの証拠がないと、単独親権にはならないのですか?
医師の診断書のような客観的な証拠が必ず必要というわけではなく、さまざまな事情が総合的に考慮されるとされています。ただし、主張が認められずに共同親権と定められることもあり得るため、早めに弁護士に相談し、準備を進めることをおすすめします。
共同親権・単独親権でお悩みの方へ
共同親権とするか単独親権とするか、離婚後に進学や転居をどう決めるかは、ご家庭の事情によって判断が大きく変わります。お子さんの利益を第一に、取り決めから裁判所の手続まで弁護士がサポートします。
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7まとめ
この記事のまとめ
- 共同親権か単独親権かは、話し合いがまとまらなければ裁判所が子の利益のため一切の事情を考慮して決める
- 虐待やDVのおそれがあるときなどは必ず単独親権。DVは身体的な暴力に限らない
- 共同親権でも、日常の行為と急迫の事情があるときは一方の親が決められる
- 転居や進学先の決定、入学・転学の手続は原則として父母で決める。DVなどからの避難は例外
- 意見が対立したら、親権行使者の指定・監護者の指定などの裁判所の手続を利用できる
共同親権の制度は始まったばかりで、個別の事情によって判断が分かれる場面も少なくありません。離婚の取り決めや、離婚後の進学・転居でお悩みの際は、早めに弁護士へご相談ください。