30秒まとめ
- 別居中でも収入の多い配偶者には婚姻費用の支払義務がある
- 金額は裁判所の算定表を基準に決まる
- 支払いを拒否された場合は調停の申立てで請求可能
1婚姻費用とは
婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を維持するために必要な費用のことです(民法760条)。具体的には、衣食住の費用、医療費、子どもの教育費などが含まれます。
夫婦には同居・別居にかかわらず、婚姻費用を分担する義務があります。収入の多い配偶者(義務者)は、収入の少ない配偶者(権利者)に対して婚姻費用を支払う必要があります。
婚姻費用と養育費の違い
- 婚姻費用:配偶者と子どもの生活費(離婚成立まで)
- 養育費:子どもの生活費のみ(離婚成立後)
婚姻費用には配偶者自身の生活費が含まれるため、養育費よりも金額が高くなるのが一般的です。
2婚姻費用の相場
裁判所の算定表
婚姻費用の金額は、裁判所が公表している「婚姻費用算定表」を基準に算定されます。算定表は、義務者と権利者の年収、子どもの人数・年齢に応じて標準的な金額を示したものです。
金額の目安
| 義務者の年収 | 子なし | 子1人(0〜14歳) | 子2人(0〜14歳) |
|---|---|---|---|
| 400万円 | 4〜6万円 | 6〜8万円 | 8〜10万円 |
| 600万円 | 6〜8万円 | 10〜12万円 | 12〜14万円 |
| 800万円 | 10〜12万円 | 14〜16万円 | 16〜18万円 |
※権利者の年収が0〜100万円程度の場合の目安。実際の金額は個別事情により異なります。
算定表に加算されるケース
以下の場合は、算定表の金額に加算して請求できる可能性があります。
- 私立学校の学費:公立学校の教育費を超える部分
- 特別な医療費:持病の治療費等
- 住宅ローン:義務者が住宅ローンを負担し、権利者が居住している場合の調整
3婚姻費用の請求方法
STEP 1
内容証明郵便で請求
まず書面で婚姻費用の支払いを求めます。内容証明郵便で送付することで、請求した事実と時期を証拠に残すことができます。
STEP 2
婚姻費用分担調停の申立て
相手方が任意に支払わない場合、家庭裁判所に婚姻費用分担調停を申し立てます。調停の申立費用は収入印紙1,200円と郵便切手代のみです。
STEP 3
審判
調停でも合意できない場合は、裁判官が審判で金額を決定します。算定表を基準に、個別事情を考慮して決定されます。
STEP 4
強制執行
審判で決まった婚姻費用を支払わない場合は、給与の差押え等の強制執行が可能です。
婚姻費用の始期
婚姻費用は原則として請求した時点以降の分が認められます。別居を開始したらできるだけ早く請求することが重要です。請求前の未払い分は遡って請求することが難しい場合があります。
4相手方が支払いを拒否する場合の対処法
よくある拒否の理由と対応
- 「離婚原因はそちらにある」→ 有責性は婚姻費用の減額事由になる可能性はあるが、支払義務自体はなくならない
- 「収入がない」→ 潜在的稼働能力(働く能力があるのに働かない場合)をもとに算定される可能性がある
- 「住宅ローンを払っている」→ 住宅ローンの支払いは婚姻費用の一部を負担しているとして調整される
5よくある質問
別居したらすぐに請求できる?
はい。別居開始後すぐに請求できます。ただし、認められるのは原則として請求した時点以降の分です。別居したら速やかに請求の意思を示すことが重要です。
専業主婦でも婚姻費用を請求できる?
はい。専業主婦であっても、収入の多い配偶者に対して婚姻費用を請求できます。算定表では権利者の年収が0円の場合の金額も示されています。
婚姻費用はいつまで支払われる?
離婚が成立するまで、または別居が解消されるまで支払義務が続きます。離婚成立後は婚姻費用ではなく養育費の問題になります。
6まとめ
この記事のまとめ
- 別居中でも婚姻費用の請求権がある
- 金額は裁判所の算定表を基準に決まる
- 原則として請求した時点以降の分が認められる
- 支払いを拒否されたら調停→審判→強制執行で対応
- 別居したら速やかに請求することが重要
- 有責性は減額事由になっても支払義務はなくならない
別居中の生活費の確保は、離婚に向けた準備の第一歩です。適切な金額を請求するために、弁護士にご相談ください。