30秒まとめ
- 離婚は「離婚の成立」「お金」「子ども」の3つの観点を漏れなく検討することが重要
- 婚姻費用・財産分与・年金分割には、それぞれ算定方法や請求期限がある
- 親権の獲得には「監護権(監護実績)」の確保が決定的に重要
離婚を考えるとき、「何から手をつければいいのか」「何を取り決めればいいのか」がわからず不安になる方は少なくありません。離婚には、離婚そのものの手続きに加えて、婚姻費用・財産分与・慰謝料・年金分割といったお金の問題、親権・面会交流といった子どもの問題など、検討すべき論点が数多くあります。本記事では、離婚・男女問題で押さえておくべき7つの基礎知識を、弁護士が体系的に解説します。各テーマの詳細は、個別記事へのリンクからご確認いただけます。
1離婚自体の問題
離婚の種類
日本における離婚には、主に3つの方法があります(家庭裁判所の審判による「審判離婚」を含めると4種類)。
| 種類 | 概要 | 割合・特徴 |
|---|---|---|
| 協議離婚 | 夫婦の話し合いで合意し、離婚届を提出する方法 | 離婚全体の約9割を占める |
| 調停離婚 | 家庭裁判所の調停委員を介して話し合う方法 | 協議が調わない場合に利用 |
| 裁判離婚 | 調停も不成立の場合に、訴訟を提起して離婚を求める方法 | 法定離婚事由の立証が必要 |
このほか、調停が不成立でも家庭裁判所が職権で離婚を成立させる「審判離婚」がありますが、実務での利用は極めて限定的です。
裁判離婚が認められる場合(法定離婚事由)
裁判で離婚が認められるためには、民法770条1項に定める「法定離婚事由」のいずれかが必要です。
民法770条1項の法定離婚事由
- 不貞行為 — 配偶者以外との性的関係
- 悪意の遺棄 — 正当な理由のない別居、生活費を渡さない等
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みがない強度の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由 — DV、モラハラ、長期間の別居など
相手が離婚に同意していれば事由は不要ですが、相手が拒否する場合は、上記の事由を証拠で立証する必要があります。
→ 詳しくはこちら:協議離婚・調停離婚・裁判離婚の違いをわかりやすく解説
有責配偶者からの離婚請求
不貞行為などにより自ら婚姻関係を破綻させた配偶者を「有責配偶者」といいます。有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められません。ただし最高裁判例により、次の3要素を総合的に検討して要件を満たす場合には、例外的に離婚が認められることがあります。
- 別居期間が相当の長期間に及んでいること
- 夫婦の間に未成熟の子がいないこと
- 離婚により相手方が社会的・経済的に過酷な状況に置かれないこと
2婚姻費用
婚姻費用とは
婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を維持するために必要な費用のことです(民法760条)。具体的には、衣食住の費用、医療費、子どもの教育費などが含まれます。夫婦には、同居・別居を問わず婚姻費用を分担する義務があり、収入の多い側が少ない側に支払います。
原則的な算定方法
婚姻費用の金額は、裁判所が公表している「婚姻費用算定表」を基準に、夫婦双方の年収・子どもの人数と年齢に応じて算定されます。私立学校の学費や特別な医療費などは、算定表の金額に加算される場合があります。
請求は早めに
婚姻費用は、原則として請求した時点以降の分しか認められません。別居を開始したら、速やかに請求の意思を示すことが重要です。
→ 詳しくはこちら:別居中の生活費(婚姻費用)の請求方法と相場(近日公開予定)
3親権・監護権
親権と監護権の定義
- 親権 — 未成年の子を監護・教育し、その財産を管理する権利義務です。「身上監護権」と「財産管理権」から成ります。
- 監護権 — 親権のうち、子と一緒に暮らし、日常の世話や教育を行う部分です。親権から監護権だけを分離し、別々の親が持つことも可能です。
親権を獲得したいのであれば、監護権の確保が極めて重要
親権争いでは、「現に子を監護している実績」が極めて重視されます。すでに子を主に監護している側が親権者に指定されやすい傾向があるため、親権を望むのであれば、子の監護を継続し、その実績を積み・記録することが決定的に重要です。
監護権に争いが生じた場合、裁判所はどのように判断するか
裁判所は「子の福祉(子の利益)」を最優先に、以下の要素を総合的に考慮して判断します。
親権・監護権の判断要素
- 監護実績 — これまで主に誰が子を育ててきたか(最重要)
- 継続性 — 現在の安定した監護環境を維持できるか
- 子の意思 — おおむね10歳以上で考慮、15歳以上は必ず意見を聴取
- 監護環境 — 住居・収入・監護を支援する親族(監護補助者)の有無
- 面会交流への寛容性 — 相手と子の交流に協力的か
→ 詳しくはこちら:親権を獲得するために知っておくべきこと(近日公開予定)
4面会交流
面会交流の定義と法律上の根拠
面会交流とは、離婚後または別居中に、子と離れて暮らす親が子と会って交流することです。民法766条は、子の監護に必要な事項として面会交流を協議で定めることを明記しており、その取り決めにあたっては「子の利益」が最優先されます。
争いが激しい場合に裁判所が定める相場
協議や調停で合意できない場合は、家庭裁判所の審判で頻度・方法が決められます。実務上は「月1回程度、1回あたり数時間」が標準的な目安ですが、子の年齢・生活状況・これまでの関係性により増減します。
審判が下されても面会させてもらえない場合はどうすればよいか
調停・審判で面会交流が決まったにもかかわらず、相手方が応じない場合には、次の手段があります。
- 履行勧告 — 家庭裁判所が相手方に対し、取り決めを守るよう勧告する手続き
- 間接強制 — 履行勧告でも応じない場合に、不履行1回ごとに一定額の金銭支払いを命じることで、心理的に履行を促す手続き
→ 詳しくはこちら:面会交流の取り決め方と、会わせてもらえないときの対処法(近日公開予定)
5財産分与
2分の1ルール
財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚時に分け合う制度です(民法768条)。専業主婦(主夫)であっても、家事や育児を通じた財産形成への貢献が認められるため、原則として2分の1ずつ分与されます。これを「2分の1ルール」といいます。
特有財産とは、その立証責任はどちらにあるか
婚姻前から所有していた財産や、相続・贈与で得た財産は「特有財産」として、財産分与の対象外となります。
ある財産が特有財産であることは、それを主張する側が立証しなければなりません。立証できない場合は共有財産と推定されてしまうため、婚姻前の残高がわかる通帳のコピーなど、証拠の確保が重要です。
検討対象となる主な財産
名義を問わず、婚姻中に形成された以下の財産が財産分与の対象となります。
財産分与の対象となる主な財産
- 不動産(自宅・マンション等)
- 預貯金
- 株式・投資信託
- 財形貯蓄
- 生命保険・共済(解約返戻金相当額)
- 退職金(婚姻期間に対応する部分)
- 自動車
なお、住宅ローンが残る不動産は、時価からローン残債を差し引いた金額を基準に評価します。また、財産分与の請求期限は離婚成立から2年である点に注意が必要です。
→ 詳しくはこちら:財産分与の対象になるもの・ならないもの、評価方法(近日公開予定)
6慰謝料・損害賠償
請求が認められる主な場面
離婚に伴う慰謝料は、相手方の有責行為によって精神的苦痛を受けた場合に請求できます。主に以下の場面で認められます。
- 不倫(不貞行為) — 不貞をした配偶者本人、および不貞相手の双方に請求が可能です
- DV(身体的暴力)
- 悪意の遺棄 — 正当な理由のない別居、生活費を渡さない等
一方、「性格の不一致」など、どちらか一方に法的責任があるとはいえない事情では、慰謝料は原則として認められません。なお、慰謝料請求権の時効は、損害および加害者を知った時から3年です。
→ 詳しくはこちら:不倫(浮気)の証拠として有効なもの・無効なもの
7年金分割
年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金(報酬比例部分)の保険料納付記録を、夫婦間で分割する制度です。将来受け取る年金額に影響します。分割の方法は2種類あります。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 合意分割 | 夫婦の合意、または裁判手続により按分割合(上限2分の1)を定めて分割する方法 |
| 3号分割 | 2008年4月以降の、扶養されていた配偶者(第3号被保険者)であった期間について、相手の合意なしに2分の1で分割できる方法 |
年金分割の請求期限は、原則として離婚成立の翌日から2年です。
→ 詳しくはこちら:年金分割のしくみと手続き|合意分割・3号分割の違い(近日公開予定)
8よくある質問
離婚で最初に何をすればよいですか?
まずは「離婚の方法(協議か調停か)」を考えつつ、財産・収入の資料や、相手の有責行為の証拠を確保することが重要です。別居を考えている場合は、婚姻費用の請求準備も並行して進めます。
取り決めは口約束でも大丈夫ですか?
口約束は後のトラブルのもとです。特に養育費のように継続的な支払いを伴うものは、強制執行が可能な「公正証書」や調停調書の形にしておくことを強くお勧めします。
弁護士に相談するタイミングはいつがよいですか?
離婚を考え始めた段階でのご相談が理想です。早期に相談することで、証拠の集め方、別居のタイミング、有利な進め方についてアドバイスを受けられます。
9まとめ
- 離婚は「離婚の成立」「お金(婚姻費用・財産分与・慰謝料・年金分割)」「子ども(親権・面会交流)」を漏れなく検討する
- 婚姻費用・財産分与・年金分割には、それぞれ請求期限がある
- 親権の獲得には監護実績の確保が決定的に重要
- 各テーマの詳細は個別記事を参照し、不安があれば早めに弁護士へご相談を